TAACHI

商店街からアートストリートへ——島の船着場に“もう一つの場所”がひらかれる

TAACHIは、佐渡国際芸術推進機構が運営する複合施設で、わたしが生まれ育った佐渡の両津夷商店街に位置し、衰退した商店街をアートストリートへと再生する試みだ。佐渡の玄関口として知られる両津は、両津湾と加茂湖に挟まれた砂州上に広がり、佐渡の歴史において明治以降に栄えた重要な場所であった。わたしは、両津商店街で幼少期を過ごし、その後、国内外で活動した後、佐渡に戻ってきた。年に一度は佐渡に帰省していたのだが、年々寂れていく両津夷商店街を見て、何かできないかと考えていた。幼い頃、下駄の音と浴衣姿の観光客で賑わっていた両津には、映画館や銭湯がいくつもあり、多くの人々で賑わっていたものだが、今はその面影もない。佐渡島の人口は、昭和35年以降減少傾向にあり、近年は毎年約1,000人ずつ減少しているという厳しい現状がある。TAACHIは、現代アートを核に、アーティスト・イン・レジデンスや地域交流プログラムを展開することで、地域に新たな活力を生み出すことを目指している。「TAACHI(ターチ)」は沖縄の方言で「二つ」を意味し、二つの島が一つになった佐渡島の成り立ちや、二つの港がある両津の地名に由来し、訪れる人に「もう一つの場所」を提供したいという願いが込められている。さらに、地域の魅力を最大限に引き出し、「アーティストの仕事を生み出す」ことと「アーティストやアート好きが集まりやすい状況」を同時につくれる「泊まれるアート」の展開も視野に入れ、アートホテルの実現を目指している。TAACHIが、かつての賑わいを取り戻し、佐渡の新たな文化発信拠点となることを願っている。

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TAACHI

住所:新潟県佐渡市両津夷53番1