新潟絵屋は、多様な「よい美術」に触れることのできる場を目指し、「見る人」の企画による「よい美術」「よい作家」を紹介する展示を常時開催している。展示室は、大正期の町屋を改装した、柱、欄間、土壁、格子戸のある「家のような」空間だ。この空間が単なる展示スペースではなく、「ホワイトキューブではない」場所として選ばれ、作られたということは、新潟絵屋の代表であり、砂丘館の館長、そして美術評論家でもある大倉宏さんの子供の頃の体験や、新発田市にあった「画廊たべ」との出会いが、深く影響を与えていることがわかる。「絵を飾ることで部屋全体の空気が変わる」という原体験や「画廊たべ」のような生活空間とアートが共にある場所への思いが、新潟絵屋の「生きた場所」というコンセプトに繋がっているのだろう。
2000年に創設されて以来、全国の会員に支えられて、違うジャンルで活動している人が集まり一緒に運営してきたというのも、興味深い。いろんな見方から展覧会を企画することで、来る人にいろんな鑑賞体験を届けてくれる。運営委員で理事の井上さんは、「毎日いろいろな方がぶらりと訪ねてくださいます。画廊は、気軽に美術に触れることができる場であると同時に、求める誰かがいれば、作り手から見手へ美術品を橋渡しする場でもあります。こうした活動が、だれかの日々の生活を生き生きしたものにするお手伝いになれば嬉しいです。」と話す。
絵屋の公式サイトのブログ、連載「新潟絵屋について」を読むと、単なる画廊ではなく、「見る人」が中心となって運営する、非常に実験的な場所であることがわかる。運営委員の人たちが「ここは発表の場ではない」という最初の約束や、アーティストではない「企画者」の存在をちゃんと記す仕組みなど、大倉さんをはじめ運営委員の人たちの熱意が、絵屋を作っているのだと強く感じた。また、2008年から展覧会案内「新潟島とその周辺ギャラリー&ミュージアムマップ」を毎月発行したり、新潟市が所有する芸術文化施設である砂丘館という古いお屋敷も活用し、芸術や生活文化を紹介する活動も行っている。時には、新潟絵屋と砂丘館の2会場で展示を行うとのことだが、二つの会場での展示もまた、「生きた場所」へと繋がるのではないだろうか。新潟市に、このような場所があり、多様な企画展を開催し活動しているということは、今後も新潟のアートシーンから目が離せない。


