「おれたちの伝承館」は、福島県南相馬市小高区に2023年夏開館した、震災と原発事故の記憶をアートで伝える私設ミュージアムである。写真家であり編集者でもある中筋純が運営の中心人物を担い、館内には、津波で流された記憶そしてそれから再起する命の力強さを象徴する「鳳凰」の立体作品や、被災地の風景を木炭で描いた大作など、震災の実相を可視化する作品が並ぶ。これらは単なる記録ではなく、喪失に抗い、再生を希求する強い意思を込めた表現である。
「おれたちの伝承館」は、時間とともに風化していく記憶に対して、アートという手段で問いを投げかけ続ける場所であり、来訪者に深い思索と感情の揺さぶりをもたらす。中筋の個人的でありながら普遍性をもつ表現が、この館の核となっている。


