合同会社わっしょいボヘミアン

“あそぼ!”の一言でまちづくり——久世藝術祭の現在地

久世藝術祭2024開催

Do It Yourself。きっかけは2024年の岡山県北で初めて開催された「森の芸術祭」(岡山県主催)だった。これを自分たちが暮らす町と外の地域を繋げていくための好機だと捉えて動き出したのが「わっしょいボヘミアン」(以下ボヘミアン)の河野文雄だった。古くから交通の要所として栄えた真庭市久世の中心街は、いまや少子高齢化という時代の煽りをうけ空き家が増えている。そんな町で、ボヘミアンは地域に眠る資源をアップデートすべく「エリアリノベーション」に取り組んでいる。最初に手がけたのは現在の活動拠点としている「エキマエ・ノマエ」だ。長年空き家だった古民家のリノベーションを地域の仲間とDIYで敢行。半年ほどかけて、作業をイベントごとにしながら友人知人を巻き込み行った。今では官民問わず様々な人が行き交い、プロジェクトが生まれる重要な拠点の一つとなっている。河野さんは言う。「いつも何かをするときは『あ〜そぼ!』なんだよ」と。

エキマエ・ノマエ外観:イベントに利用されることもしばしば。
こんな場所でおもしろプロジェクトが生まれる。

話を戻そう。森の芸術祭が開催されると決まったとき、河野さんは地域の魅力を最大限に打ち出しながら外から来る人を迎えたいと考えた。そして「久世藝術祭」(以下久世げー)が始まった。写真、音楽、映画、食…暮らしのなかにある表現をみんなが持ち寄った。「あ〜そぼ」に乗っかって、アーティストや高校生、地域の人がさまざまに集まり、久世げーという大きな遊び場が生まれた。

久世げー:シンポジウム。卯城竜太氏、川上幸之助氏を招き町の人たちと「地域とアート」について考えた。
久世げー:家庭に眠る古い写真が町のいたるところに出現

「あ〜そぼ」は最強だ。なぜならどんなテーマでも成立する。「遊びに乗った人は自らもっと面白くしたくなるでしょ」と河野さんは言う。そこには芸術も暮らしもたぶん勉強なんかも内包される。その発想は生活を楽しくしたいという思いにつながり、それがステキな地域醸成につながるのかもしれない。大事なのは自分たちの暮らしを自ら楽しい時間にするということだ。

遊び心とローカル愛で日々の暮らしをもっと面白く、わっしょいボヘミアンの旅はまだまだ続く。森林に囲まれたこの町のスギ・ヒノキを使った真庭産プロダクト「BeLIN」は今年4年目を迎え、中国勝山駅に設置されるなど少しずつ用途を広げているし、温泉地・湯原のゲストハウス「おゆックリン」(今夏開始予定)、久世駅近の新たなカルチャー発信拠点「ビルックリン」(今秋開始予定)も絶賛準備中だ。「おゆックリン」は地域と旅人の新しい交流拠点として、世界を股にかけた「ごみニケーション」を目論む。3階建てビルをリノベした「ビルックリン」は1階にギャラリーカフェ「しまうま」を併設し、中長期滞在向け施設としてアーティストインレジデンスなどを行う予定。ほかにManiwa Circular Projectも始動中。わっしょいボヘミアンは、言うなれば“遊び人”コレクティブだ。

河野文雄
1973年生まれ、真庭市久世出身。大阪・アメリカ・東京・鹿児島で遊びの造詣を深めたのち、2012年Uターン。本業は地域の廃棄物を資源にするバイオマス・リサイクル業。2021年わっしょいボヘミアン設立。
ハイパー・イバショ・クリエイター、パーティー・ディレクター、あそびプロデューサー、日本トイレ研究所会員、ケトジェニックダイエット・アドバイザー。

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合同会社わっしょいボヘミアン

住所:岡山県真庭市久世2426