JR倉敷駅の目の前という超好立地にそびえる一棟ビルを丸ごと活用した複合文化拠点が、「KAG(Kurashiki Avant-Garde)」である。カフェ&バー、ギャラリーが併設し、地元の若者たちにとっては交流空間でありながら、同時に国際的かつ政治的な視点を持つアートの発信地として、独自の存在感を放っている。
ギャラリーのディレクターを務めるのは、倉敷芸術科学大学准教授で『パンクの系譜学』の著者、川上幸之介。社会とアートの接点に鋭く切り込む企画には定評があり、これまでに全国を巡回した「Punk! The Revolution of Everyday Life」展、アーカイブを用いた「アートワーカーズ連合(AWC)」展、「ゲリラ・ガールズ」展、「Bedtime for Democracy」展など、数々のラディカルな展示を実現してきた。
こうした活動を支えるのが、株式会社クラビズの代表取締役の秋葉優一である。川上とのコンビネーションによって、KAGは地元カルチャーとグローバルな問題意識を共有する複合的なカルチャーコンプレックスとしてハイアートとロウアートの領域横断を果たしている。
筆者自身も倉敷を訪れる際、秋葉にトークイベントを組んでもらうなど、そのおこぼれに預かっており、彼らのフットワークの軽さとネットワークの広さにたびたび助けられている。こうした存在が全国各地にもっといてくれれば、旅はどれだけ楽に、そして楽しくなることかと夢想するが、現実には極めて稀有な存在であることを実感するばかりだ。
カフェ&バーのエリアにはDJブースも備えられ、秋葉の地元ネットワークを活かし、元CONTACT(東京)のディレクター・ヤマキンらのオーガナイズによるエッジな音楽イベントなども不定期に開催されており超楽しい。さらに、KAGは日本初の私立西洋美術館として知られる大原美術館とも人的なつながりを有しており、川上の企画がKAGと大原美術館のあいだを行き来するなど、倉敷におけるユニークなアートネットワークが着実に築かれている。


