MOCAF(モカフ)

3.11のモニュメントとは──富岡に現れる美術館の亡霊

福島県富岡町に位置する「MOCAF(モカフ)」は、アートプロデューサー・緑川雄太郎らによって運営される“現代美術館”である。「Museum of Contemporary Art Fukushima(ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート・フクシマ)」の略称であり、活動の舞台となるのは、かつて避難区域に指定され、除染作業によって建物が取り壊された空き地である。

「もしこの場所に現代美術館があったなら?」という仮定を出発点に、美術館という制度や、そもそもアートとは何かという問いに対して向き合っている。とはいえ、そこに恒久的な建造物は存在しない。看板だけが立ち、MOCAFは毎年3月11日、たった1日だけ開かれる「無形のモニュメント」として継続されている。

その日、各地から人々が集まり、地震発生時刻である14時46分には町内放送のサイレンにあわせて輪になって黙祷を捧げる。初年度には「回転ドア」が出現し、参加者たちはそれを延々と回り続けた。その後ドアは解体され、焚き火の燃料となって更地にバーベキューの場を作り出した。

2年目にはミュージアムショップが一時的に設置されるなど、毎年ひとつずつ、何らかの設備やコンテンツが姿を現しては消え、火の燃料となる。さらに、そのたびに緑川は誰かの作品をキュレーションし、この土地に埋め続けている。

姿のないままに物語を堆積させていくこの試みは、追悼によって震災を呼び戻し、風化に抗い、アートがどこに存在しうるのかという問いを時間と風景に滲ませ続けている。

画像提供 : MOCAF
画像提供 : MOCAF
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MOCAF(モカフ)

住所:福島県双葉郡富岡町中央1丁目83