「トモ都市美術館は、現代都市における実験的な試みを実践・収集・紹介する美術館です。2020年4月、東京・西荻窪に開館(2025年現在は四つ木に移転)。」——公式HPにはそうもっともらしい説明が記されているが、実態は、アーティスト・トモトシによる“美術館を騙る”個人活動である。
とはいえ、その活動は侮どれない。コロナ禍に開館した当初は、インディペンデント・キュレーターの西田編集長とともにスペースに居住しながら、アーティストの秋山佑太も含めてトークショーやサロンを多数主催。その後も現在に至るまで、実に100を超えるイベントを、しかもほとんど屋外で行ってきた。内容はというと、路上飲み、不可解な散策、ただ街に潜伏するだけの試み、電車との競争、SNSアカウントの削除、野草の採取と実食などなど、路上生活の延長線上、コストゼロのアイデアばかりである。
「誰も来なかったらトモトシ1人でやってみます」という名文句とともに、毎週末、数人から数十人規模でイベントが続けられてきた(1人で開催したこともあったのだろう)。その継続力と態度は、もはやトモトシがどこに拠点を置こうが、「都市そのものが美術館である」と豪語しても、何やら過言ではないような説得力を持たせてしまうから恐ろしい。実際、トモトシ自身もすっかりその気になっており、最新作(2025年5月16日現在)では「すべてのアーティストは自分の美術館を持つべきだ——Every Artist Should Have Their Own Museum」と、自信満々に宣言している。
そのユニークさ、持続可能性をもって、トモ都市美術館は、今もっとも「失敗のない」オルタナティブスペースだと言えるだろう。


