「京島駅」と「すみだ向島EXPO」

下町の生態系──京島からはじまる都市のリミックス

東京都墨田区京島にある「京島駅」は、元米屋を改修したアートスペース/共同体である。展示や居住、レストランといった複合的な機能を備え、アーティスト・ヒロセガイを中心に、靴職人や大工、学生、シェフなど多様な人々が関わりながら、地域に根ざした「まちの駅」として機能している。筆者にとっても東京で最もそそられる空間のひとつだが、その全貌は全くつかみきれない。

建物内には巨大な穴が掘られ、パフォーマンスや展示の場となっているほか、床下では8羽の烏骨鶏が、室内の池では鯉が飼われている。ネパール料理のレストラン「Art & Nepal」や、展示・居住・ライブなどが行われる2階座敷など、日々さまざまな活動が展開され、庭や屋根裏に至るまで、アートと生活、自然と建物の境界が曖昧になる空間が広がっている。

さらに周辺では、「京島劇場」「海野貴彦商店NANZO NANZO」「バーバーアラキ」……などなど実に30ほどのスペースが次々と誕生し、それぞれが展示やカフェ、本屋など多様な形態で活動。老舗銭湯「電気湯」では、三代目の元国連職員が社会彫刻的な試みを実践し、築100年の長屋が並ぶ京島は、今や新たなアートディストリクトへと生まれ変わっている。

空き家とクリエイターをつなぐ後藤大輝らの働きもあり、こうした流れの延長に「すみだ向島EXPO」という芸術祭が開催されている。巨大資本がまちづくりを占有する昨今に、このコミュニティが東京に存在する意義はあまりにも大きい。

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「京島駅」と「すみだ向島EXPO」

住所:東京都墨田区京島3丁目50−12