つなぎ美術館

水俣の記憶を抱き、町全体にアートを展開する熊本・つなぎ美術館の挑戦

熊本県葦北郡津奈木町にある「つなぎ美術館」は、人口約4,200人の小さな町が運営するユニークな美術館です。その活動は、館内にとどまらず「町全体を美術館に見立てる」という壮大な構想のもと、地域全体に広がっています。この美術館が生まれた背景には、水俣病という歴史があります。悲劇的な経験を乗り越え、アートの力で「地域の再生」を目指すという強い使命を掲げ、1984年から続く「緑と彫刻のある町づくり」の拠点として2001年に開館しました。コレクションは、熊本ゆかりの作家の作品から、国内外の現代アートまで多岐にわたります。特にユニークなのは、町中に点在する大規模な屋外現代アートです。廃校となった小学校のプールをリノベーションし、石牟礼道子の詩の世界を体験できる柳幸典の《入魂の宿》や、森の生木に33体の仏像が彫られた西野達の《達仏》など、2008年から続く住民参画型アートプロジェクトによる津奈木町ならではの作品が訪れる人々を魅了します。また、国内外のアーティストが町に滞在して創作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンスつなぎ」を2014年から積極的に実施。アーティストが住民と交流し、成果展を開催することで、アートが地域の歴史や生活と深く結びつき、新たな価値を生み出し続けています。つなぎ美術館は、アートを鑑賞の対象としてだけではなく、地域にとって重要な機能を有する文化的基板と捉えるなど、公立美術館の可能性を問う、先進的なモデルです。水俣病の記憶を継承しながら、未来へと希望を繋ぐアートの力が、この町には息づいています。

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つなぎ美術館

住所:〒869-5603 熊本県葦北郡津奈木町岩城494